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ここでは手軽に行えて防錆効果が高いことで注目されている防錆紙・パック型防錆剤の特徴や防錆メカニズムについて解説。またメリット・デメリットや防錆紙がすすめられるケース、使用する際の注意点ついても紹介しています。
防錆紙は気化性の防錆効果がある化学物質を含んだ紙
防錆紙とは紙に金属の錆を防止する化学物質を含ませたものです。その化学物質は気化性で空気中に溶け出した防錆成分が金属の表面に皮膜を作り錆から守るという仕組みです。防錆紙を使えば、防錆油は必要ありません。
防錆紙はシートやロール状になっていて対象となる金属を包装(ラッピング)したり、密閉空間に挿入することで防錆効果を得ることができます。包装する場合はある程度の強度があり、片面に防湿加工が施されているものを使うと効果的です。
気化性の防錆効果を持つ化学物質を閉じ込めたパック型防錆剤
パック型防錆剤は、気化性の防錆効果を持つ化学物質を閉じ込めた防錆剤。密閉容器や密閉袋に入れるだけの簡単作業で、防錆効果を発揮します。
パック型防錆剤の魅力は、何といってもポンと入れるだけの簡単作業であること。包装したり、塗布したりする手間がなく、処分の際も産業用可燃ごみとして捨てることができる等の手軽さが、大きな利点と言えるでしょう。
すぐに使える紙のため取扱いが簡単。防錆油のように拭き取りは不要で、気化性なので対象となる金属の形状が複雑でも細部まで防錆効果を発揮できます。さまざまな金属に対応し包装以外に密閉空間に挿入も可能で廃棄も手間がかかりません。
種類が多く対象となる金属ごとに異なった種類のものを使用しないと防錆効果が得られないことがあります。また防湿加工のないタイプはポリ袋等の防湿材での外装が必要なことがあり、その場合は廃棄時に分別する手間がかかります。
防錆シートでよく使われているのは、吸着型防錆剤や防湿剤、乾燥剤です。吸着型防錆剤は、アミン系有機化合物やオクタデシアルアミンやジシクロヘキシルアミン。防湿剤や乾燥剤は、シリカゲルを筆頭に、加工した塩化カルシウム、シリカアルミナゲル、デシクレイなどです。
吸着型防錆剤の主要成分が、アミン系有機化合物です。アミン類の亜硝酸塩や炭酸塩などが含まれます。揮発性の気化性防錆剤のタイプは、防錆紙や防錆袋に染み込んだ薬剤が揮発し、対象物に付着します。
オクタデシアルアミンやジシクロヘキシルアミンも防錆剤の主要成分です。毒性があるため取り扱いに注意が必要です。
防湿剤や乾燥剤として、シリカゲルも有効です。湿気を除去することで、腐食を抑える効果があります。
吸水力に優れており、周囲の湿気による吸湿割合が変わりません。ただし、大量に吸湿すると発熱のリスクがあるため、取り扱いに注意が必要です。
天然の粘土鉱物が原料です。外気の湿度に吸湿性能が左右されにくい利点があります。湿気と臭いも吸着し、シリカゲルと比較しても、低湿度での吸湿性が高いです。
シートや、タブレットの乾燥剤で、吸水力が高いです。吸着以外にも、分離や触媒や、イオン効果があります。
紙という性質上、防錆フィルムより含有成分量が多いため手軽にできて高い防錆力を求めている場合におすすめです。防錆工程を削減して省エネ・省資源を目指す場合に推奨されます。
使用する前に対象となる金属の指紋や汚れを洗浄しておかないと効果が半減します。また金属の種類に合ったものを使用しないと錆を助長してしまう可能性もあります。
水に濡れると防錆成分が流れ出してしまうため包装して使う場合や保管には防湿が必要です。
防錆剤が入った容器や袋の中に対象金属を同梱する、シートで覆うだけで優れた防錆効果が得られる気化性防錆剤。ここではその中でも国産で使いやすい(※)気化性防錆剤を種類ごとに厳選して紹介します。
※国産の防錆剤の中でも、使いやすさを示したアイコンの該当項目が多い商品を、パック型防錆剤、防錆紙、防錆フィルムからそれぞれ1つずつ選出しています
城北化学工業
「ラン・ラン」
(パック型防錆剤)
画像引用元:城北化学HP ラン・ラン(https://www.johoku-chemical.com/lanram/)
使いやすさ・用途
特徴
・防錆成分の拡散までわずか15分。気化力に優れ複雑形状の金属にも幅広く活用
・サイズが小さく密閉容器に入れるだけなので、包装や廃棄の手間が少ない
・密閉容器や密閉袋を用いた金属の保管時におすすめ
アドコート
「アドパック」
(防錆紙)
画像引用元:アドコート株式会社・トップ アドパックラインナップ・トップ アドパック‐ G (鉄鋼用含浸タイプ)
(http://www.adpack.jp/lineup/type_gk.html)
使いやすさ・用途
特徴
・気化性防錆紙専門メーカーならではのラインナップで様々な使い分けに対応
・バリア材との併用でさらに防錆力アップ
・部品や金属の包装を兼ねた防錆におすすめ
アイセロ
「ボーセロン」
(防錆フィルム)
画像引用元:アイセロHP アイセロの挑戦02 ボーセロン®物語「アイセロの未来をかけた戦略商品のサクセスストーリー」(https://www.aicello.co.jp/recruit/about/challenge/boselon/)
使いやすさ・用途
特徴
・フィルムが透明なため海外輸送での防錆・梱包に役立つ
・ヒートシールによる密封やフィルムを利用した自動包装ができるため、密閉袋兼防錆剤としても利用可能
※2021年2月時点の情報。公式HPに記載の内容をもとに評価しています
※注釈:アイコンの意味
・繰り返し利用(効果がなくなるまで繰り返し利用できるかどうかで調査)
・即効性(浸透スピードに関する内容を公式HPに記載しているか)
・通販あり(すぐに必要な時に手軽に注文できるECサイトや通販サイトでの販売はあるか)
・防錆の工数が少ない(手間をかけずに防錆できるか)
・無臭(食品工場や家庭用商品など臭いを気にするニーズに応える商品に使用できるか)
・手に触れる部分の防錆(手に付いた時に落ちないか・使う時に手袋をはめた方が良いのか)
・ゴミ・廃棄コスト削減(段ボール一箱分の防錆をする際のゴミの大きさが15cm以内か)
・大容量防錆(ドラム缶サイズの防錆は可能か)