公開日: |更新日:
ここでは水で希釈するだけで防錆効果を発揮できる水溶性防錆剤の特徴やメリット・デメリットについて解説しています。また特性を生かしたおすすめの用途や作業上で注意すべきポイントなども紹介しています。
希釈水溶液が皮膜を形成する防錆剤
水で希釈して使用し乾燥後はそのまま金属加工できるのが水溶性防錆剤です。塗布すると金属表面に被膜を形成して錆を防ぐというメカニズムです。水溶性防錆剤は大きく分けると無機系と有機系のものがあります。
また皮膜形成の仕方によって、酸化型、沈殿型、吸着型といった種類もあります。酸化型は素地金属との密着性は高く、沈殿型は素地金属の密着性が低い代わりに厚い被膜を形成。吸着型は溶液中で良好な皮膜を形成するという特性を持っています。
鉄から合金まで幅広く対応し、水で希釈するため作業コストがかからず、人体・環境面にもやさしいことがメリットです。引火などによる火災発生の心配がなく、基本的には防錆油のような使用後拭き取ることなく金属加工に移れます。
水溶性のため金属表面に油が付着していると弾いてしまうことがあります。また飛散しやすい性質があるので作業内容によってはマスクやメガネなど保護具が必要になるケースがあります。なお防錆油のような長期保管のための防錆には向きません。
脂溶性防錆剤では、酸化皮膜型、沈殿皮膜型、吸着皮膜型で成分が異なります。酸化皮膜型ではクロム酸塩やモリブデン酸塩。沈殿型皮膜型は、水中イオン型の重合リン酸塩や亜鉛塩、金属イオン型のメルカトベンゾチアゾール、吸着皮膜型はアルカノールアミンや脂肪酸塩があります。
クロム酸塩は代表的な防腐剤のひとつで、緻密な酸化皮膜型の防錆皮膜を形成します。金属との密着性がよく、防錆性も良好です。
クロム酸塩と同じく、酸化皮膜型の水溶性防錆剤に採用される成分。防錆性や素地金属との密着性が高いのがメリットです。
沈殿皮膜型の水中イオン型に含まれる成分です。多孔質という特徴を持っており、厚い被膜を作ります。素地金属との密着性は多少不良です。
重合リン酸塩と同じく水中イオン型の成分です。多孔質、被膜の厚さが特徴で、素地金属との密着性は比較的悪いのがデメリットです。
沈殿皮膜型に含まれ、金属イオン型の皮膜を形成します。緻密で薄い被膜を形成する点が特徴的です。
メルカプトベンゾチアゾールと同じ金属イオン型の皮膜を形成するタイプです。動揺に、緻密な薄い皮膜を形成して錆を防ぎます。
吸着皮膜型で、似た成分に脂肪酸塩やアルキリン酸エステル酸などがあります。酸液や水溶液中で良好な皮膜を作りますが、洗浄していない面では吸着性が悪くなります。
水溶性防錆剤は水にとける防錆剤を用いています。水といえば金属の錆の発生原因ですが、水溶性防錆剤は塗布することで金属に被膜をつくって錆を防止します。
また、被膜をつくる構造によって3種類に分かれ、「酸化被膜型」「沈殿被膜型」「吸着被膜型」に分類されます。
屋内の短期錆止めに向いています。水で流すことで容易に除去できるので、工程間での防錆目的のために使用するのがおすすめです。
用いられている成分は人体に有害な場合もありますので、防錆作業時には吸い込まないようにマスクやメガネをしたほうが安全です。皮膜形成にタイプの違いがあるため使用する防錆剤の性質を理解しておくことが重要。中間防錆では次工程で被膜が邪魔になることがあるため洗浄が必要かどうかも要チェックです。
防錆剤が入った容器や袋の中に対象金属を同梱する、シートで覆うだけで優れた防錆効果が得られる気化性防錆剤。ここではその中でも国産で使いやすい(※)気化性防錆剤を種類ごとに厳選して紹介します。
※国産の防錆剤の中でも、使いやすさを示したアイコンの該当項目が多い商品を、パック型防錆剤、防錆紙、防錆フィルムからそれぞれ1つずつ選出しています
城北化学工業
「ラン・ラン」
(パック型防錆剤)
画像引用元:城北化学HP ラン・ラン(https://www.johoku-chemical.com/lanram/)
使いやすさ・用途
特徴
・防錆成分の拡散までわずか15分。気化力に優れ複雑形状の金属にも幅広く活用
・サイズが小さく密閉容器に入れるだけなので、包装や廃棄の手間が少ない
・密閉容器や密閉袋を用いた金属の保管時におすすめ
アドコート
「アドパック」
(防錆紙)
画像引用元:アドコート株式会社・トップ アドパックラインナップ・トップ アドパック‐ G (鉄鋼用含浸タイプ)
(http://www.adpack.jp/lineup/type_gk.html)
使いやすさ・用途
特徴
・気化性防錆紙専門メーカーならではのラインナップで様々な使い分けに対応
・バリア材との併用でさらに防錆力アップ
・部品や金属の包装を兼ねた防錆におすすめ
アイセロ
「ボーセロン」
(防錆フィルム)
画像引用元:アイセロHP アイセロの挑戦02 ボーセロン®物語「アイセロの未来をかけた戦略商品のサクセスストーリー」(https://www.aicello.co.jp/recruit/about/challenge/boselon/)
使いやすさ・用途
特徴
・フィルムが透明なため海外輸送での防錆・梱包に役立つ
・ヒートシールによる密封やフィルムを利用した自動包装ができるため、密閉袋兼防錆剤としても利用可能
※2021年2月時点の情報。公式HPに記載の内容をもとに評価しています
※注釈:アイコンの意味
・繰り返し利用(効果がなくなるまで繰り返し利用できるかどうかで調査)
・即効性(浸透スピードに関する内容を公式HPに記載しているか)
・通販あり(すぐに必要な時に手軽に注文できるECサイトや通販サイトでの販売はあるか)
・防錆の工数が少ない(手間をかけずに防錆できるか)
・無臭(食品工場や家庭用商品など臭いを気にするニーズに応える商品に使用できるか)
・手に触れる部分の防錆(手に付いた時に落ちないか・使う時に手袋をはめた方が良いのか)
・ゴミ・廃棄コスト削減(段ボール一箱分の防錆をする際のゴミの大きさが15cm以内か)
・大容量防錆(ドラム缶サイズの防錆は可能か)